多肉植物の成長が遅い理由は光合成の仕組みにあった「CAM型光合成の特徴」

2021年5月23日日曜日

育て方 考察

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第2回は多肉植物の光合成について。多肉植物にどのような特徴があるのかを紹介します。

第1回の一般的な光合成の記事はこちら


多肉植物の光合成(CAM型)


ベンケイソウ科の多肉植物はCAM型と呼ばれる光合成を行います。

一般的な植物の光合成との違いは、


夜間にCO2の吸収とO2の放出を行う

という点です。


なぜ昼間はCO2を吸わないのか。

多肉だけにサボッテンのか。



あ!ごめんごめん!

戻るボタン押さないで!(´;ω;`)


…夜にのみCO2を吸い込む理由は、多肉植物が自生している環境にあります。

多肉の自生地である高山や砂漠は、とても乾燥しているので、晴れた日中に気孔をあけてしまうと、水分が蒸発してあっという間に枯れちゃうのです。


そのため比較的涼しい夜にのみ、気孔を開けてガス交換を行います。



しかし、夜は涼しいですが、光がありません。ということは、光化学反応でATPもNADPHも作れないため、光合成はできません。ぴえん。


じゃあ、昼に使うCO2を夜のうちに貯めとこう!と思った多肉くんですが、葉っぱの中に蓄えられるガスの量もたかが知れています。



そこで、多肉植物は考えました。

CO2を別のものに変換して蓄えよう!


そうしてできたのが夜間にCO2をリンゴ酸として貯蔵するという仕組みです。

そうすることでCO2を扱いやすい液体として貯蔵できます。



・ CO2 + ホスホエノールピルビン酸 + NADH

→ リンゴ酸 +NAD(+)




そして、昼間にCO2が必要になったらリンゴ酸を分解して作り出します。



・ リンゴ酸 + NADP(+)

→ CO2 + NADPH + ピルビン酸



このCO2をカルビンベンソン回路で使用して光合成を行います。


ちなみにリンゴ酸という名前は、リンゴから見つかったから。


なめるとクエン酸みたいな酸っぱさです。

なので多肉も朝にかじってみると酸っぱい味がします(あと、オルトランの味もするね☆)


CAM型光合成のデメリット



過酷な環境に適応した素晴らしきCAM型光合成ですが、一般的な光合成と比較していくつかのデメリットがあります。どんなイケメンでも靴下がダサかったりするもんです。


ロスが多い


CO2がリンゴ酸を経由するので一般的な光合成よりもエネルギーのロスが多いです。リンゴ酸の原料となるホスホエノールピルビン酸はデンプンを分解して作ります。デンプン=貯金を使うわけですから、そのぶんロスが増えます。



量に限界がある


一般的な光合成は光があたった分だけ反応が行われますが、CAM型光合成は貯蔵されたリンゴ酸の量が光合成の上限です。リンゴ酸の貯蔵量は、それほど多くないため、晴れた日は日没前にリンゴ酸切れを起こして光合成がストップすることも多いです。



O2が放出できない


昼間の光合成ではO2が出てきます。
しかし、多肉植物は昼間に気孔が開けられないため、葉っぱの中に酸素がどんどん溜まっていきます。やがては酸素が多すぎて、光化学反応が停止してしまいます。そうなると光合成全体がストップしてしまいます。

これを防ぐために、酸素を出さない光化学反応に切り替わると考えられています。
それが前の記事で紹介した、循環的光化学反応です。これで酸素フリーでATPが手に入ります。そして、リンゴ酸の分解で得られたNADPHも使ってカルビンベンソン回路を行います。

ただし、カルビンベンソン回路はCO2の1分子に対してNADPHが2分子必要ですが、この方法では1分子しか用意できないので反応は半分が限界です。


まとめ

まとめると、

・CAM型光合成は、夜と昼の分業制

・乾燥に強いけど、効率が悪い

多肉植物の成長が遅いのは、こういう理由だったんだね~。




-追記-
多肉植物の1日について書きました。
 

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